研究内容
永田研究室では、高分子材料の新しい機能(性能)の創成・開発を目的として、素材の『複合化』による研究を行なっています。その『複合化』手法には、種々のレベル − マクロ、ミクロな複合化技術があり、同時に、等方的構造と異方的構造も高分子材料の性能や機能を支配しているため、構造制御、特にプロセシング(成形加工)も含めた研究も行なっています。
具体的に、各種高分子材料の機械特性・熱特性・電気特性など物理的性質の向上やプラスチックのリサイクル技術、環境調和高分子(生体適合性や生分解性)に関するテーマを行なっており、他研究室や他研究機関、民間企業との共同研究も行っています。
異種材料との複合化による高分子の機能化
熱や電気がながれる高分子複合材料
高分子材料に熱伝導性や電気伝導性を付与するためには、それらの特性を有する添加材(フィラー:炭素材料やセラミックスなど)と複合化する必要があります。しかしながら、高分子マトリクス中に熱や電気の伝導パスを形成させるために多量のフィラーを混ぜてしまうと、高分子の特徴である柔軟性や成形加工性が失われてしまいます。私たちの研究室では、二種類の高分子がつくる相分離構造を利用し、フィラーの分散状態を制御することで効率的に伝導パスを形成させ、少量のフィラーで機能発現できる複合材料の設計を行っています。
天然資源を活用した高分子複合材料
近年、低環境負荷な材料として天然由来の高分子材料への期待が高まっています。その中でも、植物から抽出されるセルロースナノファイバー(CNF)は、豊富な資源量や優れた機械特性、高いアスペクト比などの特徴から、高分子材料との複合化が活発に研究されています。しかしながら、親水性のCNFと疎水性の高分子を均一に混ぜ合わせ、高機能な複合材料にすることは簡単ではありません。私たちの研究室では、表面修飾CNFを用いた高分子複合材料の開発や、高分子/CNF/無機フィラーからなる多成分複合材料の設計など、CNFのさらなる活用法を探索しています。
また、この他にもキトサン(甲殻類の殻由来)やセリシン(カイコの絹タンパク質)を利用した材料についても研究を進めています。
プラスチックのマテリアルリサイクル技術
通常のプラスチック製品は自然界で分解されず、そのためプラスチックごみの処理は大きな社会問題となっています。昨今ではプラスチックごみのリサイクルが活発に行われており、その重要性はますます強まっています。プラスチックのリサイクル方法の中でも、プラスチックごみを高分子の状態のまま、新たな原料として再利用する「マテリアルリサイクル」は、「サーマルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」と並ぶ重要な技術として位置付けられています。私たちの研究室では、マテリアルリサイクルが難しい架橋ポリマーのリサイクル技術の研究や、廃棄ポリマーを原料にした高機能複合材料の開発を通して、持続可能な社会への貢献を目指しています。
複合化による材料表面の摩擦・摩耗の制御
接触する2つの物体が相対運動する際、その接触面では摩擦力が発生します。地面と靴の間に摩擦力がはたらくことで私たちは道を滑らずに歩くことができますが、一方で摩擦はエネルギーのロスや材料の摩耗といった人間の生活にとって好ましくない現象も引き起こします。摩擦や摩耗を扱う学問や技術分野は「トライボロジー」と呼ばれ、これからの持続可能社会を実現していくために重要な研究領域です。私たちの研究室では、複合材料の設計という観点から摩擦や摩耗を制御できる材料の開発に取り組んでいます。具体的には、高分子材料に種々のフィラーを複合した際の摩擦摩耗特性の影響の調査や、分子設計に基づく新しい固体潤滑剤の開発などを行っています。